止まってしまった時計 タコ師匠のバイク史:その42

龍神にリベンジしたい!

秋祭りの季節に龍神に行きたいと時計屋からお誘い。
 
しかし僕のその日は…前々から静岡県で住宅博のイベントがあり、ソフトクリーム屋とフランクフルト屋を出して、ひと稼ぎする予定だったのです。
 
秋と言えどまだまだ暑く、ウロウロと歩き回らなければならない住宅博は、小腹が空くのと、涼をとるものが驚愕する個数を売るイベントなんです。
 
ツーリングは次週にしようとお願いし、静岡県に向かいました。
GSX-R1000で。
 
イベントの資材と材料は、僕のハイエースワイドボディースーパーロングに満載です。
 
車で行くつもりでしたが、天候が良いのとツーリングがてらも良いと思ってバイクにしました
 
イベントが始まり、既に満員御礼。
 
快晴ですから少し暑く、ソフトクリームの行列が絶えません。
 
4台あるマシンの2台ずつでソフトクリームの原料を冷やしながら行列を捌いていきます。
 
同時進行でフランクフルトを、焼いて焼いて焼きまくらないといけません。
 
でも行列を無くしてしまうと客足が止まるのでゆっくりペースに変えたり、並ぶのしんどそうな人は優先したり、やり過ごしながら昼休みを迎えました。
 
時計屋のお父さんから鬼の電話着信です。
 
「2番目の赤ちゃん出来たのか? なら本人から電話あるはず・・・?」
 
と電話してみたら…
 
「また単車で走ってて、車にひかれよってな~ 救急車で運ばれてアホやな~」
 
「このイベント終わりで直行しますわ。 よろしくお願いいたします。」
 
って会話で一旦終わったのです。
 
 
ホットドッグ用のパンを鉄板の上に並べ、レタスを載せてからフランクフルトを挟んでいきます。
 
棒を抜いたらホットドッグの完成です!
 
昼時ですからほっといても行列が絶えません。
 
トングで紙に入れたらお客さまがセルフサービスでマスタード、ケチャップ等かけて立ち去るスタイルです。
 
又々時計屋のお父さんから鬼の電話。
 
 
「亡くなってしもた…」
 
電話のむこうですすり泣く声。
 
もう一度聞き直しました。
 
「死んでしもたんや…」
 
すぐに向かいます。
 
店を放置し、売上金の千円札を鷲掴みにポケットに入れ、GSX Rに跨がり走り出しました。
 
前掛けをしたまんま、ジャケットとグローブのみで今迄にないぐらいのスピードで飛ばしました。
 
奇跡の復活を願いながら。
 
静岡県から一時間半で家に到着し、時計屋のお父さんに電話しました。
 
「今戻ったんで電車で向かいます。」
 
着替える途中、バイク仲間や同級生達にも電話連絡しました。
 
メールの一斉送信を始めて使いました。
 
次の日が葬儀であったにも関わらず、沢山の友達や仲間が参列してくれました。
 
あんなに泣いたのは山崎一夫さんに完封されて負けた時依頼ありません。
 
僕は無条件にバイクを卒業しました。
 
 
~余談~
 
その頃カブリオレは拠点を東京へ移し、サラリーマン生活をしておりました。
 
休日の午後、ふと携帯に入る一通のメール。
 
【時計屋が死んだ】
 
何の悪戯や?!
 
一瞬訳が分からず、その頃そんなに深い付き合いもしていなかった高校時代のクラスメート、送信元の人物であるタコ師匠へ連絡。
 
「時計屋が死んだ」
 
受話器の向こう側でタコ師匠の震える声、彼のこんな涙声を聞くのは初めて。
 
悪戯ではないらしい・・・この期に及んでまだ混乱している頭の中。
 
あまりに突然の出来事で、それでも信じられない気持ちのまま、大阪へ。
 
同級の友人達が申し合わせた様に、暗い服に身を包み集まるその場所へ。
 
こんな状況になってもまだ時計屋の死が受け入れられていない僕を、棺の中の彼が目の前に現実を叩きつけた。
 
正真正銘、時計屋が眠っている、こんな木の箱なんかに収まって・・
 
その瞬間に、堰を切った様に、こんなにも涙がと思う位、湧いて出てきて自分でも驚いた。
 
大の大人が声を上げて泣きじゃくってしまった。
 
 
高校時代、僕と時計屋はとても仲の良い友人だった。
 
卒業後、タコ師匠と時計屋はとても仲の良い友人だった。
 
3人は同じクラスメートだったけど、決して仲が悪かった訳じゃないけど、タコ師匠と僕の間にはさほど接点はなかった。
 
そんな僕らの縁を再び繋いでくれたのは、あまりに早く走り過ぎた時計屋だったのです。
 
 
タコ師匠のバイク史をブログ記事にしていく中で、話題の中心がバイクだけに、このシーンは避けて通れないんだろうなぁと思っていました。
 
強面のタコ師匠ですが、その外見とは裏腹に優しく繊細な部分があり、今回の時計屋の一件を記事にするかどうかは僕に一任すると原稿をくれました。
 
 
・・・飛ばせる訳ないでしょ?
 
だって今の僕らの関係は、時計屋抜きに語れないのですから・・。
 
 
見ず知らずの奴が書いた、どーでもいいブログ記事を見るために立ち寄って下さっている方、いつもと違った湿っぽい内容になってしまってすみません。
 
でも今回だけは、多少説教くさいかも知れませんが言わせてください。
 
バイクは楽しく乗ってください。
 
でもくれぐれも事故だけにはご注意してください。
 
命だけは買い替えが効きません。
 
あなた自身の為、あなたを大切に思う人達の為に。